自己資本比率とは?安全性を分析するための基本指標
2016.05.27
篠田です。財務分析は、財務諸表から企業の状態を分析するためのものです。様々な方向から分析しますが、今回は安全性分析について、その中でも、中期的な安全性をみるための指標、自己資本比率について説明します。
自己資本比率が一番重要となってくるシーンは融資を受ける時です。金融機関は自己資本比率を中心とした安全性について厳しくチェックしています。また、株式が上場している場合は投資家が気にする数値の一つです。この数値の良し悪しは企業の財政状態を見る上で重要な基準の1つとなっています。
自己資本比率の良い会社は規模に対して借入金などの負債が少なく、しっかりとした土台がある企業と言えるでしょう。経営者であれば自社の自己資本比率くらいは抑えておくべきと言えます。
目次
- 自己資本比率とは
- 計算方法と数値の目安
- 自己資本比率の改善方法
- まとめ
自己資本比率とは
自己資本比率とは、総資産(現金や預金、売掛金、建物など)がどれだけの純資産(自社の資本金や積み上げてきた利益)で構成されているのかをみる指標です。
資産は、負債と純資産から出来ています。その純資産の割合です。資産と負債・純資産の関係が分からないという方は以下の記事を参照ください。
例えば現金預金が10億円あったとしても、借入金が10億円であれば、安全性が高いとは言えませんよね。現金預金の全てが借りてきたお金で、本当の意味で自分のお金は無い訳ですから。
違う例を見ていきます。現金預金が1億円でも、借入金が1000万円であれば、自分のお金は9000万円です。前の例よりも規模は小さく見えますが、安全性という点でみると圧倒的に後の例の方が高いことが分かると思います。
このように、持っているお金(資産)の内、自分のお金(純資産≒自己資本)がどれくらいあるのか、数値化したものが、自己資本比率です。
計算方法と数値の目安
自己資本比率は以下の計算式で求めることができます。
株主資本額÷総資産額×100=自己資本比率
株主資本とは、純資産の項目ですが、ほとんどの中小企業は純資産額とイコールとなるかと思います。
この自己資本比率は高ければ高い程良いとされています。中小企業の黒字企業の平均が約30%、黒字企業の中でも特に優良とされる企業は50%を超えます。
目安としては40% 超を目指すと良いでしょう。
自己資本比率の改善方法
自己資本比率とは中期的な安全性を測るためのものですので、すぐに数値が良くなる対策というものは限られています。また、本質を改善していくのであればどうしても時間がかかるものです。それを踏まえた上で対策をいくつか見ていきましょう。
1.増資する(資本金を増やす)
増資をすることで資本金の金額が増加し、自己資本比率が改善します。単純に現金を受け入れることも出来ますが、社長からの借入などの債務を資本金にかえてしまう方法(デットエクイティスワップ)を選択することも可能です。返す予定の無い社長借入金等があれば検討してみても良いでしょう。
増資をするにあたっては様々な手続きや懸念すべき事項が存在します。
手続きとしては、株主総会や株主への通知、登記などをする必要があります。それから懸念事項として、増資をすることによって資本金額が1000万円や1億円を超えることになると、法人住民税の金額が増えたり、税制上のメリットを受けられなくなったりする事があります。増資をする際はプロに相談しながら決定する事をオススメします。
2.借入金などの負債を返済して減らす
借入金などを返済する事によって、自己資本比率の数値は改善されます。ただし、負債を減らす際には支出を伴うケースが多く、資産が減少してしまい短期的な安全性を損なってしまうこともあるため、むやみに借入を返済すれば良いというわけではありません。
流動比率、当座比率、固定長期適合率など他の指標も合わせて見ながら、行動の意思決定をしましょう。短期的な支払能力を分析する方法については以下の記事をご参考ください。
また、利益に結びついていない固定資産や、不良在庫になりそうな資産は早めに売却し、現金化しつつ、借入金の返済に回すと良いでしょう。
3.利益を中長期的に確保していく
利益を確保することで、純資産の部の繰越利益剰余金が増加していきます。自己資本が増えていくので、自己資本比率は改善していきます。
赤字体質の会社で利益を増加させていく事は簡単ではありません。多くの施策を打ちながら徐々に体質改善をしていく必要があり、非常に時間がかかります。しかし、本質的に安全性が高い強い会社になるためには利益を確保していく方法をしっかりと考えていく必要があります。
1と2の方法はすぐに自己資本比率を改善することができますが、その場限りで実体が変わったわけではありません。緊急で自己資本比率の改善を求められる場合は、まずは1と2の方法を行い、その結果生まれた余剰資金で次の投資を考え、利益に結びつけていくことを考えていくべきでしょう。
まとめ
自己資本比率とは、安全性を測るための1つの指標に過ぎません。この数値が良いから、良い会社というわけではありません。特に自己資本と利益の割合を見るROE(自己資本利益率=規模に対して利益が適正か見る指標)や、流動比率、当座比率、固定長期適合率などの他の安全性分析と合わせて企業の問題点を発見し、対策を立てていく必要があります。
他の財務分析の記事と合わせて読んでいただくことで、会計を使ったより戦略的なアプローチができるようになります。不明点などはお気軽にお問い合わせください。
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